GINZA SIX 裏 / レナ・レスボワール 上
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老いてこそ人生

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やはり、スポーツはリアルタイムで観るのが一番と、
可能なかぎり夜中から始まるアテネオリンピックの競技を観てしまうと、
感動は受けるのですが、次の日のつらいこと、つらいこと。
そんなこんなで、最近ちょっとボーっとしています。
それに今年の夏の異常な高温続きは、日焼けが大好きな私にとっては嬉しいのですが、
庭の植木の悲鳴が聞こえるようで、朝晩水やりが大変です。
このような<理由のあるボー>は、この原稿が皆さまの目に届く頃には秋風の真っ只中で、
「今年の夏は暑かったねぇ~」と、なんとなく淋しい思い出になっているのでしょうね。
つまり時の流れはそんなものなのですから、この暑さもアテネオリンピックも、
一期一会の心意気で乗り切りましょう。
それにしても、今年のオリンピックのメダルの多さに驚くとともに、父子鷹のカップルが目立ったことが意外でした。
恐そうなお父さんに一生懸命従う息子、娘たちだなあと思いながら見てましたが、
あれは命令ではなく、息子、娘たちのやりたい意欲を父親が伸ばしている結果の結びつきのようです。
強い父。
その父に従い、越えようとする息子、娘たち・・・・。
最近のちまたではまったく目にしない光景に、競技以上に感動してしまいました。
やはり父親は、子供たちにとって強くて偉い人でなくてはならないですよね。
というわけで、どの患者さんともオリンピックの話で盛り上がりました。
きれいごとを言ってみても、スポーツは勝つことに意義があるのですがら、今年はいつもより話題がはずみます。
そんなある日、お嫁さんの紹介で、お年を召されてはいますが、
おじいちゃまとお呼びするのが失礼なほどお元気なMさんという方が来院されました。
 「どうなさいましたか?」
 「ものをおいしく食べたいんじゃが・・・・」
 「今入っている入れ歯は、いつ頃作られましたか?」
 「10年以上も前になるかな」
 「下の入れ歯はどうなさいましたか?」
 「痛くて入れたことがない」
 「それじゃあ、上の入れ歯はガタガタですね。よく我慢なさいましたね」
 「・・・・フム。たしかに困っている。
  そこでだ、最近、石原慎太郎が書いた『老いてこそ人生』を読んで、そうじゃ、
  わしも”老いてこそ人生”をやりたくなって、
  そのためにまずメシを食わねばと思って、入れ歯を作る気になったんじゃが」
 「それはたしかにごもっとも・・・・・。それならばなおのこと、ちゃんとかめる、いい入れ歯を入れましょう」
 「問題はそこじゃ。いったい、いくらくらいするものかい?」
 「上は□□円くらい、下は△△円くらいですね」
 「その、ちょうど真ん中くらいはないのかね」
 「寿司屋じゃあるまいし、<松><竹><梅>とはいきませんよ。
  
  私の場合、<ピン>と<キリ>しかありませんよ。
  
  だいたい日本人はすぐに”とりあえず・・・・・”と真ん中を狙いますが、
  お見受けするところ、Mさんはたいそうお元気ですし、
  ましてや”老いてこそ人生”を実践なさろうとお考えなのに、なにが”真ん中!!”ですか!?」
 「いやいや、じつを言うと、わしはお金をムダには使いたくないだけのことじゃ。
  ところで先日、ここを下見に来たが、3階の診療室というのも、なかなか眺めがよくていいもんだね。
  それに、女の先生というのも初めてで、ちょっと驚いたわい。
  男っぽいし、これからここへ来るのが楽しくなりそうじゃ」
 「私も楽しくなりそうです」
 「ついでに言っておくけど、わしはホテルと病院にはいまだかつて泊まったことがないんじゃ」
 「ホテルと病院?
  じゃあ、女の部屋には泊まったということですか?
  そして、そこで入れ歯で困ったことがあったとか、なかったとか・・・・?」
 「ムムム・・・・。よし、わかった。あんたの作る入れ歯に賭けよう!」
 「それはありがたいのですが、それより入れ歯に賭けないで、私に賭けてくださいよ。
  そのほうが有意義だと思いますよ」
 「勘弁、勘弁!!」
このMさんは79歳。来月80歳になられるそうです。
皆さん、負けてはおれませんね。
がんばりましょう!

カテゴリー:ジャンヌダルクは燃えている  投稿日:2008年5月6日