GINZA SIX 裏 / レナ・レスボワール 上
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No.29 怖い先生

常夏のハワイから昨日帰ってまいりました。
夏女の季節が終わり、そろそろ仕事モードに戻らなければなりません...
近頃よく「優しい先生」、「優しい治療」と言われますが、
思うに患者さんの「いいなり先生」、「いいなり治療」になってしまっている方が
おられるような気がいたします。
半年ほど前に他院で全顎ブリッジにしていただいたという患者さんが、
顔を半分腫らして来院されました。
レントゲンには、そのずーっと以前から抜かなければいけなかったであろう歯が3本ありました。
「どうして抜かなかったのですか?」
「私が抜かないでとお願いしたのです。」
「その他の選択肢は示されませんでしたか?」
「インプラントしかないと言われたのですが、恐いので断りました。」
「義歯については?」
「私がいやだと言いました。」
「???...」
確かに歯を抜く抜かないかは一大事ではあります。
しかし、診断と決定権は歯科医にあるはずなのに、
最近は患者さんが自分で判断し、決定するようです。
昔、恩師の河邊清治先生が、時々、ため息をつきながら言われていたことがあります。
「最も難しい治療は抜かなければならない歯の説明をすることであり、
 最も難しい症例は気難しくてわがままな患者さんである。」
私はいつも本音で患者さんに接しています。
ところがそれが度を越しているようで、
「あそこは腕は良いけど、恐い女の先生がいる」
と言われているようです。
しかし「恐いもの見たさ」で来られる患者さんも増えています。
私はそのような方には自信たっぷりにこう答えます。
「人間は、特に日本人は、あいまいな答えが大好きで、
 本当のことをはっきり言われるのが嫌いな民族なのです。
 特に良くないことはなおさらです。
 ですから、良かれ、悪かれ、本当のことしか言わない私を
 恐いと思われるのは仕方ありませんね...
 ところで、都合のよいことだけを説明いたしましょうか?
 それとも本音トーク?
 どちらにいたしましょう?」
ライオンヘアに、日焼けで真っ黒になった顔に笑顔をつくりながら、
こんな言い方で仕事をしている私は、
やっぱり本当に「恐い先生」なのかも知れません。

カテゴリー:デンタル小町  投稿日:2008年6月6日