Vol.14 人間力
8年前、ある会合で母校(北海道医療大学)の歯学部の学長と話す機会がありました。
すると学長が、
「天井さん、これからは《立派な歯科医師》を作るため大学は変わります。
現在カリキュラムの検討中です」
と言われました。
私は、失礼ながら学長に申し上げました。
「学長が思われる《立派な歯科医師》とは、どのような人のことですか?
学長は、きっと頭のよい学生で、大学に残られ教授になられ、
現在は最高位の学長にまでなられていますが、
卒業生のほとんどは、大学から離れ、世間、世の中に出て勤務医か開業医になっています。
大学が世間ではないとは申しませんが、
学長御自身が大学以外をご存じないということは事実です。
そういう学長の思われる《立派な歯科医師》と
勤務医や開業医の思う《立派な歯科医師》には、
ズレがあると思われます。
そこのところをどのようにお考えですか?」
「……………」
と、近くにいた教授が
「天井君の思う《立派な歯科医師》像を君自身で学生に話してくれないか?」
と助け舟を出して下さいました。
歯学部とは、歯科医師になるための国家試験を通す勉強だけをするところだと
極端に言い切るつもりはありませんが、実際のところは余計(?)な事を考える暇もなく、
考えていてはやっていけない6年間ではありました。
事前に4年制の大学を出ている私にしてみれば、
“これからどうやって生きてゆこう! 人生とは何だ! 何が出来るんだろう!
希望は、夢は!”と、
仲間達と夜を徹して熱く語り合う経験を持たない恵まれた(?)歯学生達を
不思議に思ったものです。
さて、話をもどして《立派な歯科医師》とは、どういう人のことなのでしょう。
私個人の考えですが、大学の勉強の出来・不出来よりも、
人間力のある人を称するのではないでしょうか?
ガンと宣告されて手術をしなければならない時、どのような医者に命を預けますか?
私は2つの条件を満たす医者を探します。
ウイットに富んでセンスのいい人です。
この2つを兼ね備えている先生ならば、
術中に何があっても機転を効かせて助けてくれるでしょう。
よしんば助からなかったとしても、素晴らしいジョークの1つも言って
楽しくあの世に送ってくれるはずです。
つまり、私が思う人間力のある人とは、ユーモアがあり、センスが良くて、
常に心に余裕を持ち、視野が広く、真の優しさを知っていて、
まわりを明るく楽しくする人のことを称します。
現在、私は《立派な歯科医師》になる前に《立派な町医者》になろうと努力しています。
そして、いつか、これら2つの像が重なればと修業中です。
そのために、
1.多くの歯科界以外の友人を持ち、
2.本屋で片っ端から表紙が気に入っただけで本を買い、
3.突然、国内外を問わず旅に出て、
4.年齢の違う人達と付き合い、
5.コンサートやミュージカルにアンテナを張り、
6.週に2本以上の映画を観て(スカパーetc)、
7.有機野菜を中心に食事をし、
8.ダイエットを心掛け、
9.趣味を持ち、
10.親孝行をし、お墓参りをし、
11.ニュース番組は必ず見て、
12.節約を心掛け、
13.感謝の心を持ち、
14.皆の幸せを願えるようになりたい、
と思っています。
今年も母校の学生に先輩として《立派な歯科医師》についての話に行って来ます。
今年はどんな話をしに行きましょうか?
生きてゆくだけで難しい人生ですが、彼等の6年間が、
人間形成にとってとても大切な時期であることを自覚させ、
それぞれに人生の目標・希望を持つことの大切さを伝えることができたらいいなあと
考えています。
今一度、“人間力”について考えてみませんか?