vol.27 キッカケ
医業はサービス業に仕分けされます。
つまり私たちは歯科医業という商売をしているのです。
しかしながら、なかなか商売という感覚は持てません。
私は歯科医業を商売と割り切り、どのような営業をしようかと考えてみました。
そして、暇な時はケータイを持って近くをブラブラしています。
可愛いお店で小物を物色したり、
ブティックでシャツの1枚も買ってみたりとさり気なく歯科医師としての顔を売ります。
お昼時には、定食屋やそば屋へ通い、お店の方と仲良くなったら、
カウンターの隅に当医院のパンフレットを置いていただきます。
盆、暮れには、交番と薬局に届け物をします。
「歯が痛い! 」と言って、痛み止めを買いに来たお客さんや、
「どこか歯医者さんを知りませんか? 」と交番に尋ねて来た人に
当医院を紹介していただくためです。
”セコイ!”と思われるかもしれませんが…
サービス業に分類されている限り、患者さんが来てくださらなければ
商売のしようがありません。
暇だからと暗く診療室に閉じ籠っていても気分は沈むばかりです。
私は常に当院の小さなパンフレットや名刺を持ち歩いています。
先日、買い物時、支払いのレジのお姉さんの歯のあまりの汚さに、そーっと名刺を渡して、
「もしよかったら、その前歯の相談に来ませんか?」
とあくまで優しく、控え目に言いました。
すると、すぐにその方から電話がかかり、予約が入りました。
2~3日後、相談だけという名目で来院されたのですが、
結局前歯とその他、保険のクラウンを全部やり直すことになりました。
そして彼女は、こう言われました。
「実はキッカケが欲しかったのです。
来年結婚することになり、気になっていたのですが、
友人に相談しても”余り気にならないわよ”と相談に乗ってくれなくて、
ずっと気になっていましたので、声をかけてくださってありがとうございます」
「そうだったのですか。
同性の友人は嫉妬をします。
きっとあなたが結婚する、歯を治して更に美しくなることが羨ましかったのですよ」
「そうなんですね。自分は歯を治しているんですよ」
「でも結婚していないでしょ?」
「そうです。そうです」
なんだか、人生相談みたいになりましたが、
私は彼女に”キッカケ”を作ってあげて、結果的には大変喜ばれました。
2月に福岡で、義歯の講演をした時、
オフレコで、自費診療のこと、保険点数のことを独断と偏見を込めて語り始めると、
突然、会場に拍手が湧きあがりました……。
そして、ある先生から、数日後、メールをいただきました。
……今までずーっと保険診療や点数制度に疑問を持ってきましたが、
“決まっていること””仕方のないこと”とあきらめていました。
でも先生のような考えの方がいる事に驚き、なんだか胸がスッキリとし、嬉しかったです。
これからも頑張ってください……エトセトラ……
私たちはサービス業を営んでいるのです。
ですから”キッカケ”というセールスをして、
“キッカケ”に気が付いていない患者さんの掘り起こしをしてみましょう。
患者さんは、どこかにいい先生がいないか探しているのですよ。
この原稿を読んで、少し気分が変わり、
外へ飛び出す”キッカケ”のお助けになればと思っています。
ホラホラ、いつも混んでいる店のカツ丼を食べに行きませんか?
きれいなお姉さんのいる喫茶店はねらい目ですよ。