vol.30 いい話
昨日、青森での講演『明日から即役に立つデンチャーテクニック』を終えて帰ってきました。
30年程前の秋に青森を訪れた事がありますが、
その時は紅葉があまりに美しく、バスの窓から”ワァ~ワァ~”と歓声をあげながら、
十和田湖へ向かった事を覚えています。
今回は、見渡す限り青碧しい新緑の季節で、山も平野も、
行けども行けども緑色の森のようでした。だから青森って言うんですね。
せっかくの日曜日の4時間をムダな時間だったと思わせないように
一生懸命お話したつもりですが、力が入り過ぎて、
質問の返答の私のアクセントが、東北弁になってしまっていましたが、
講演後のアンケートを見せていただくと、
ほとんどの方に『大変良かった』という感想をいただき、
更に『大変面白かった』と言っていただきましたが、
本当は『大変勉強になりました』と言って欲しかったのですがねぇ…。
でも、お勉強は楽しくやらなければ身に付かず、やる気が起きませんので、
私の講演を聞いて、青森の、そして東北の先生方が義歯の面白さを知り、
楽しく治療をされる事を祈ります。
突然ですが、8月8日にビッグタイトル≪世界一受けたい義歯の授業≫を開催いたします。
私と2人の歯科技工士のジョイントで、
午前の講義後、お昼から、実際の患者さんにお越しいただき4時間、合計6時間、
咬合採得、咬合調整、最終印象等々、ミッチリとマル秘テクニックを実演いたします。
つまりこれさえおさえれば、義歯のプロになるという秘伝の講義です。
河邊先生から実際に学んだことを”ここまで見せるか!!”という程の
親切、丁寧な解説付きですので、
義歯が好きになるために、元気になるために、
ついでに恐いもの見たさに、ぜひお越しください。
手ぐすね引いてお待ちしています。
最近のちょっとした、いい話です。
私の友人で大学では非常に優秀な男がおりましたが、
世間に出ると、頭の出来と手の器用さは反比例するかのようで、
いつまで経っても形成はうまくならず、スタッフは常に入れ替わり、
それでも開業時はバブルの最盛期でなんとかなったのですが、
あっという間にバブルがはじけて、
患者数は激減し、イライラは最高潮に達して、
そろそろ閉院をと考えていた頃…ある新人の衛生士がやってきました。
そう、まるで女神のようにやってきたのです!
彼女は、ニコニコと明るく親切で、とても優しく、
そして彼を励まし、笑わせてくれたそうです。
そんな歯科衛生士の仕事を天職のように、心から楽しんで働く彼女を見ているうちに、
彼はハッと気が付きました。
(自分は今まで、歯科医師の仕事を好きだと思ったことがあっただろうか…。
不器用を言い訳に、いい加減な治療に逃げていたのではないだろうか。
自分の都合ばかりを理由に、患者さんの事を本気で考えてあげたことがあっただろうか。
スタッフを大切にした事なんて1度もない!)
彼は現在、笑いながら言います。
「僕は、この年になって、まさか20歳そこそこの小娘から、
こんなに大切な事を学ぶことになろうとは思わなかった。
今は自分の度量に合わせて、難症例は他院に紹介し、
自分の出来る事だけに誠意を尽くして取り組むようにしたら、
やっと診療所に笑顔が戻り、仕事が好きだと思えるようにもなった。
すると、患者さんもボチボチ増え始めて、
なんだか、やって行けそうだし、やって行こうと、今は思っているよ」
元来、理屈好きだった彼が、本当に優しい笑顔で私に笑いました。
大学時代、出来ない成績を実技でカバーしていた私を、
優秀だった彼は少々軽蔑していたかもしれませんが、
卒業して25年、同じ仕事をやってきた彼が、
この仕事を天職だと知って、やっと同志になった笑顔でした。