天ママStyle vol.43 歯科口腔保険法に思う
先日『歯科口腔保健法』が成立したことはご存知かと思いますが、
この法案で一体何が変わるのか理念で終わるのか・・・・・
地方では、口腔衛生センターが設けられたり、国民の口腔衛生に対する啓蒙運動が
促進されるかも知れませんが、
それだからといって来院患者の増加に結び付くかどうか・・・・・
”絵に描いたモチ“に終わらなければいいのですが。
いずれにせよ劇的な好転は期待できそうにありません。
私達は歯科医師になった時から、歯科治療イコール保険診療という刷り込みをされ、
保険診療をしている歯科医師は良心的な歯科医師だと思われてきました。
しかし、卒業したての先生の補綴物の、
ベテランの先生が削るクラウンも同じ点数であるために、
ヘタな腕はバレず、上手な先生は損をする十把一絡げの点数設定では極端な話、
真面目にやればやる程、困窮するというのが現状です。
よしんば保健診療を擁護したところで、
クラウンで2年、義歯で半年しか保障しないものが、
良心的な保健診療といえるでしょうか。
日本歯科医師会は、全国民皆保健という名目の下、
なんでもかんでも保健診療に含めようとしまうが、
枠を広げる程、全医療費の中のたった7.3%でしかない歯科医療費では、
自分で自分の首を絞めるようなものです。
今回の法案で、歯科治療に目が向けられ、予防が大切と理解されたとしても、
7.3%の枠内のことであり、予防のためにこのパーセントが増すとは考えられません。
つまり、この法案の下に“予防”を保健診療内に入れるとなれば、更に首が絞められます。
が、しかし、歯科疾患は予防できるものであり、
国民のためを思うと、やはり“予防”は大切です。
そこで、百歩譲ったとします。
つまり発想をまったく変えて、自己責任である歯科疾患の“予防”を、
この法案の下に義務化し、
年に3~6回の予防受診を義務付け、予防処置の総てを保健でカバーし、
代わりに今まで含まれていた補綴処置等を保健から外すということが
考えられないでしょうか?
カリエスや歯周病にならないと歯科医院に来院されない患者さんを待ちながら
処置をする出来高払いの治療を保健診療でするより、
カリエスや歯周病にならないための予防のお金を国が負担する方が、
本当の意味で、国民の健康を考えていることになると思います。
国民皆保健ではなくて、国民総予防となればデンタルIQもあがり、
もし治療の必要性が生じたとしても高額な治療費に納得していただけるはずです。
外国の場合は、本当にお金が無い患者さんは大学病院へ行き、
無料を条件にインターンの練習患者となり、治療の向上に役立っています。
仕事に希望を失っている歯科衛生士は、依然意欲を燃やし、
予防にアイデアを活かすでしょう。
そして彼女達が自主的に保健請求をさせてもよし、
または予防点数の6~7割を渡すもよし・・・・
歯科医師は歯科衛生士の管理料と歯科衛生士が見つけたカリエス、
歯周病の処置をしっかり自費治療し、
そのための勉強をします。
『歯科口腔保健法』が制定されたことを契機に、我々は見方を変えて、
真の国民のための歯科医療とは何か?と自身に問いかけ、
この行き詰まった保健診療に手を付けていただきたいのです。
実現が3年後、5年後である、改正を謳うことにより、その間に駆け込まれる患者さんで
歯科医院は満杯になるはずです。
つまり“今のうちに治療しておかねば、保健がきかなくなる”・・・・・患者談。
その間に私達歯科医師は、生き残るための勉強、専門分野の追及、
より良い治療に生き甲斐を見出しましょう。
私の人生は俗に言う波乱万丈型です。最初から歯学部を目指した訳ではありません。
30歳で歯学部に入学した時、人は“10年の回り道”と言いましたが、
私は“10年の宝物”だと思いました。
真直ぐに歯科医師になった方には失礼ですが、
この“10年の宝物”が私を“井の中の蛙”に収めず、
語れる人生の楽しさ、世の中の広さを教えてくれました。
今、共に働く歯科医師の娘が言います。
「ママが死んでも、私が死ぬ時も歯科界は変わんないヨ!
どんなにママが言っても、そんなもんヨ!」
(そうかなぁ?・・・・・)
皆さ~ん、この歯科界はおかしいで~~~~す!
ツイッターやフェイスブックで叫んでみようかな?
ちょっとおもしろいかも・・・・・・。