天ママStyle vol.77 仕事の心得
先日、高知へ講演に出かけました。坂本龍馬の生誕の土地だけあって、いたるところに“龍馬”“龍馬”“龍馬せんべい”“龍馬まんじゅう”。道路標識さえも『気をつけろ! 龍馬が見ている 土佐の道』、そんなの(見ているわけないじゃん!!)と思いながらも笑えます。
その龍馬のせいか、皆様おおらかでくったくがなく、東京でアクセク生きている私には“ゆる~い”リズムに戸惑いました。
何はともあれ、心のこもった“おもてなし”を本当にありがとうございました。
さてさて、私の最近の地方での講演は、いかに自費治療をするか! 自費治療を理解していただくために何をするか、どうするか! 自費義歯とはどんなものなのか!!等々を力説しておりますが、理解していただけているのかどうか、反応がいまいち弱いように思えます。
歯科の診療は、医科とは内容も質も異なります。
確実に予防ができる疾病です。なのに、削らないとお金になりませんので、矛盾だらけの『予防』連呼……
半年や2年間の保証しかない『補管』という安心言葉でごまかしながら、個別指導に当たらないように1本ずつ、期間をかけて治療をします。
そして、現実はもう少し悲惨です。
被せてしまえば、技術がヘタでもバレず、咬んでもいないインプラントを咬めていると錯覚する患者さんにホッとして、最悪は咬み合わせが大事だと分かっていても、どんな咬合が正しいのか勉強していないので、とりあえずの調整をし、患者さんに咬み合わせが「高いです」と言われるがままに削り、削りすぎたところで「ちょうどいい」と言われて、そんなものかと思い、面倒な義歯はやりたくないので、「痛いですよ、老けますよ」と逃げに逃げて、カッコつけて、高額なインプラントを勧めます。
さらに、白い歯は高価で、銀歯(クラウン)は安いと、訳の分からない説明で、必死に白い歯を売り込みます。
この現実の原因は、銀歯(クラウン)や義歯のコストパフォーマンスを計算したことがなく、衛生士からは、衛生士が稼ぐ保険点数には全く見合わない給料をボラれ、近所に悪いウワサが流れないように、とにかく優しく優しく患者さんに接し、治療方針さえ「ここ抜いてください」「はいはい」「ここに入れてください」「はいはい」「とりあえず痛いのを取ってください」「はいはい」と歯科医師のプライドをかなぐり捨ててやっていかないと、やっていけないのです。
どうしてこうなってしまったのでしょう……
そして、自転車操業、だから自転車操業……
原因はあなたです! 歯科医師です!
ヘタな形成も被せればバレないとウソぶき、義歯はめんどうくさいと勉強せず、だからインプラントに逃げ、やっと打ったインプラントが失敗している事にさえ気付かず、訳の分からない咬合調整は恐いので、患者さんの「高い」という言葉に頼り、衛生指導のたかだか80点のために、出来の悪い衛生士をおだて上げ、奥さんからは稼ぎが悪いと同情と怒りの目で蔑まれ、勉強に行こうにも家族サービスが壁となり、夜遅くまでの診療に疲れ切って、このままでは、なんだかダメになると分かっていても、とりあえず来てくださる患者さんに感謝し、新患さんが増えることを祈願する日々……
さあ!
・形成の勉強を1からはじめましょう。
・義歯の印象をうまく取れるようになりましょう。
・コストパフォーマンスを再確認してください。
・材料費をチェックし、スタッフ全員で覚えましょう。
・衛生士を仕込みなおしましょう。
・咬合の勉強をしてください。
(例えば、桑田正博先生がおられます!)
頑張って勉強をしたら、美しい形成に銀歯(クラウン)を被せるのが嫌になり、それこそ自費の輝く白い歯を入れたくなり、苦労して出来上がった義歯を患者さんにお渡しするのが惜しくなりますヨ。
患者さんからは、“肩こりが治った”“偏頭痛が治った”“何でも食べられる”“若くなった”と言っていただきましょう。
そして、いい仕事をして、立派な歯科医師になりましょう。
ついしん
保険診療でいい仕事は無理です。
とりあえず診療、なのですから…