天ママStyle vol.79 その男ゾルバ
12日間の長いゴールデンウィーク明けです。ジェットラグに悩まされ、朝の4時半に起きて、この原稿を書いていますが、妙にいろいろな事が頭の中をかけめぐり、文章がまとまりません。
今回の旅は、夢にまで見た帆船でのクルーズでした。普通の大型客船は乗客が3,000人を超す事が多いのですが、今回の帆船は140名程度、風の吹くまま、気の向くままとは言わないまでも、そのような感覚に囚われながら、贅沢の極みのような楽しい旅で、娘と私は真っ黒になって帰国しました。
ゴールデンウィークを挟んでいるとはいえ、12日間、両方の診療所を全休にしての休暇で、スタッフ達も同様にスッキリとした顔で各地のおみやげを持って現れました。
この12日間の休みを長いと思う方が、まだまだ日本では多いと思われますが、今回の船旅の乗船客のほとんどが1ヶ月以上の旅の途中のクルーズのようで、休暇の単位の違いに、ちょっと情けなく、羨ましくもなりました。
さて、この旅の話をさせてください。
まず当然ですが、すべて英語です。日本人は私と娘だけでした。そして全食事付き、目が覚めると新しい国、新しい島へ入港します。
ロードス島での感動のお話です。
この島では、各々観光や散策に疲れて帰って来ると、乗客全員が島のレストランに招待され、飲めや踊れやの宴が催されました。ブラジルの方々は大騒ぎでしたが、ほとんどの方は手を叩く程度です。
と、突然、私は輪の中に入りたくなり、ついでに映画『その男ゾルバ』の主題曲をリクエストしてしまいました。
すると、予想もしない「ワ~~~~」という大歓声が上がり、みんな立ち上がり、輪の中へ入りだし、その輪が大きく、幾重にも重なり、そして、そして……大盛り上がり……
『その男ゾルバ』の映画の説明をしましょう。
アンソニー・クインが主演の本当に昔の映画で、ある時、ギリシャの小さな島に事業を起こす野望を持ったお金持ちの若者が現れます。
この若者と仲良くなった、自堕落でお調子者のアンソニー・クインが島の風習に翻弄されながらも、妙な男気を持って、この若者を助けるのですが……結果、大失敗……
散乱した材木だらけの海辺で、キーキー騒ぐオウムの鳥籠を傍らに置いて、若者とアンソニー・クインが肩を組みながら「チャチャーン、チャチャーン……」とギリシャ音楽に合わせてステップを踏み始めます……
半泣きの若者が、段々と、やけくそな顔になり、笑顔になり、そして踊り出す……
初めて、この映画を観たのは、確か高校生の終わり頃かなあ~。それからも深夜に、時々観ていたのですが、何度観ても奥が深く、大好きな映画です。
私はもう最高の気分でした。
踊るみんなの顔も、本当に嬉しそうです。みんな『その男ゾルバ』の映画を観ているんだ! みんな、あのアンソニー・クインが好きなんだ! そして、“アイ ラブ ゾルバ!!”、私は叫びたい気分になりました。
そんな気分で踊る私の様子をビデオで撮っていた娘は、側にいた外国人達に、「君のママはすごい!! たいして英語が話せないのに、あのパワーはたいしたものだ!」と褒められたそうです。
私は潔い事が好きです。男であれ、女であれ、潔く生きている人が好きです。(なぜ、ここで急に「潔い」という言葉が浮かんだのでしょうか?)
とにかく、やりたい事をやり、言いたい事を言う!
やらねばならない事に努力し、言わなければいけない事を正々堂々と言う勇気を持つ人になりたいと思います。
我が家のバラは満開の時期を迎えて、現実の生活に戻った私を迎えてくれました。四季咲きですので、これから秋の終わりまで、私を楽しませてくれます。
無国籍の極めて私らしい空間。どこよりも、どの国よりも、実は私はこの我が家が大好きです。
長い休み明け、朝焼けの光の中で、この原稿を書いています。
とてもすがすがしいです……
とりとめないのですが充実しています……