天ママStyle vol.99 “時を駆けるおばさん”
ゴールデンウィークが終わり、梅雨の始まりのような雨の日が続き、育てているバラは虫と病気にやられなかなか気分爽快な朝が始まりません。
これでも昨年の今頃に比べれば順調な方なのですが…。
昨年は後輩に裏切られ、同業者に仕事をかき乱され、モンスター患者さんにいじめられ、良かれと思ってやっている事がことごとく裏目に出て、考えれば考える程辛くなり、車を運転しながら深いため息と涙が流れ、我ながら自分の心の持ちように苦労しました。
昨年だけが辛かったという訳ではなくて、その昔の若い頃の「今頃」はどうだったのでしょう。
どうやって乗り越えてきたのでしょう…。
患者さんが減れば夜も眠れず、子供の学費に四苦八苦、その子供に反抗され、ローンに焦り、スタッフにうとまれながらも気を使い、なぐさめて欲しいパートナー(夫、妻)もおらず、唯一の味方は無邪気な猫と犬だけでしたが、今思えば、どのような苦境も必ず過ぎてゆく事を知りました。
とりあえず目先の事だけを解決して、とりあえず正しい心でいようと心掛け、人様の忠告にはまどわされず、とりあえず静かに耐えるのです。
つまり、辛い時、苦しい時は、何もせず、“時”が過ぎゆくのをじっと耐えるしかありません。
不眠症になれば昼寝をして体力をつけ、子供の学費は奨学金にして、留年しないように忠告し、スタッフ達には自らの治療に対するポリシーを語りつつ、良い仕事をしようとする姿を見せつけて信頼を得、夫や妻がいない事の気楽さを謳歌して、犬と散歩すれば、人生の見方が少しは変わります。
私はある時から、他人の幸せを心から願ったり、忠告に耳を傾けたり、人の為に何かをしたりと、良い人ぶる事を止めました。
今、生きているだけで大変なので、シンプルで美味しいものを少し食べ、今日より明日の方が仕事がうまくいくと信じ、遠くに住む娘とLINEのやりとりで笑い合えて、老犬と散歩ができれば、こんな幸せな事はないのだと思うようにしています。
嫌な奴とは縁を切り、お世辞を言わず、悪口も言わず、同情をされず、同情もせず、友人を少しにして深く付き合い、時々、大声をあげて泣きながら、笑いながら酒を呑み、心から感動できる事や人に会いたくて旅に出る…。
そんなつつましい人生(??!!)を過ごしたいと考えるようになりました。
おかげさまで、今年は少し感じが良いようですので、大きな事を望まず、そっと“時を駆け抜けるおばさん”でいようと思います。
辛い事を抱えている方
患者さんが減ってしまった方
恋人に振られた方、いない方
悩み事を作って解決できない方
なんだか淋しい方
今日は明日になり、明日は明日の風が吹き、
必ず“時”は流れ過ぎてゆくのです。
・辛い事は忘れましょう
・患者さんが1人になったら焦りましょう
・恋人より友達を作りましょう
・悩んだって仕方ないのであきらめましょう
・みんな1人で産まれ、1人で死んでいくのです
と、“時を駆けるおばさん”が言ってますよ。
そういえば今年のゴールデンウィークは、45年ぶりにポルトガルに行きました。
人生の初めに行った20代の私が歩いた石畳を、70代になろうとする私が嬉しそうに踏みしめたのです。
この姿こそまさに、“時を駆けるおばさん”でした。